春の夜風にあてられた！

　二週間と短い春休みをただアルバイトに浪費し、一週実習を行って訪れた土曜日。無為に過ごしてしまったな、と感じこれはまずいと思いながらも自室からは特になすすべもなく、ぼんやりとスマホを眺めたりニコ動を見たりゲームしたりしてるうちに0時を過ぎてしまった。下記超える頃には二時だろうか。

　夕飯に釣ってきたソイをアヒージョにした残りのオリーブオイルを使ってペペロンチーノを作った。にんにくをたくさん入れて鷹の爪も入れてあって、ソイの旨味も溶け出し、文句のない味となった。ただいかんせん油が多かったのか、胸やけがひどかった。そのうち、ペペロンチーノのせいかはわからないが、動悸・悪寒・ふるえが発生し、気分が悪くなった。自律神経がおかしいのだろうか。しばしばこの症状に見舞われていて、困っている。なすすべなく横になったりしても一向に良くならない。思い切って窓を空けて換気をしてみた。４月とはいえ、北海道はまだまだ寒い。夜ともなれば本州の冬くらいの寒さはあるかもしれない。それでも春の訪れを感じずにはいられないように温かみを感じた。ソファに移動して、少し肌寒いくらいのままじっとしてみた。

　どうにも、ムクムクと不思議な気分になってきた。それ同時にさきほどまでに感じていた気持ち悪さの消退を感じた。春である。春を身体で味わっていた。

　無為な土曜日を過ごしてしまった。うんざりとする。同じ部屋・同じシチュエーションでも、自分じゃなければ、もっと幸せに幸福にできるかもしれないな、と思った。日曜日もどうせ楽しくないみたいに思えてならなかった。牢獄とまでは思わないが、部屋に閉じこもるのは退屈であって、寂しさを覚えてならなかった。月曜日にはまた実習があると思うと落ち着かなかった。

　　ぐるぐると浅い思考の迷路の中にいるような気がしたときに、思い出した。最近自分とちゃんと向き合えていないのではないか、と。そんなふうにして筆を取った。

　高校生ぐらいのときによくこういう気分になった。こういうというのは、センチメンタルということである。それでも同じセンチメンタルといえば割と違っている。高校生の頃はもっと深刻なセンチメンタルだった。もっと重要で、魂を引き裂くかのようなセンチメンタルだった。今ではどうだ。もっとぼんやりと角の取れた、曇りがったセンチメンタルである。遠き日の感覚を意識的に思い出そうと、春の夜風も手伝って、そんな日々もあったなあと懐かしさを覚える。あの頃図書館でひとりで本を読んだり勉強していたりした。図書館から見える公園の桜の木々は、四季折々の顔を見せた。桜を眺め、梅を愛で、新緑に心踊らせた。秋は色づき、冬には寂しく禿げ上がった。いつだって一人だった。隣に誰かいてくれればな、とずっと思っていた。こうやってそれらしく様子を表現するのは初めてである。当時はそんなふうには思いもしなかった。ただずっと寂しいという感情のまま、景色を眺めていた。それだけ大人になったのかもしれない。ただその寂しさの感情は、成仏していない。

　横浜の街をひとりで歩いていた。自分は一人だった。誰かと関わりたいと（今でも）思うが、積極的に関わることはしなかった。できなかったのかもしれない。ただし、もっとも無理にあがいたところで、その寂しさをピッタリと埋め合わせる形で誰かと関わるというのは難しかったような気もする。そうする勇気はなかったと思う。今だってないかもしれない。

　精神科の実習で、困った患者さんがいた。精神疾患というほどでもないが周りの人に迷惑をかけまくった挙げ句の果に精神科に放り込まれた人だった。カルテの中で「対人希求性は高い」と書かれていた。本人は寂しさを感じて人と関わろうとするのに、周りの人にことごとく嫌われてしまうようだった。

　以来ずっと「対人希求性」というワードが引っかかっている。自分に重ねてしまうのだ。関わりたいと思ったりすることは多いけれど、上手くやれないな、と。そう思うにつけ自己嫌悪に陥ったりしていた。

　そんなこんなで、この感情を、感情が求めるままに外側に解決を求めるのは難しいように思っている。手の届く範囲で叶えられるもの求めて、それを得られたときに満足できるように欲望の方を変えていく努力をするほうが最終的な幸せにつながるんじゃないかとか思っている。

　なんの話だっけ。まあいいや。別の話。最近はなんというか、少しいい加減な生き方が出来るようになってきた気がする。というのは、もっと周りのひとに気を使いすぎたりしてそれが嫌だと思っていたのだけど、雑な関わり方ができるようになってきた。ちょっと言い方きつかったかな、怒ったかな、みたいなこと気にしないでいられることが増えた気がする。嫌われても仕方ないし、そうなっても後で弁解すればいいし、嫌な感情を抱かせるのもそれはそれで悪くないのかな、というような。結局のところ、気にするばっかりに自分のことを押し殺していると身体に悪いことがちゃんと分かってきたのかもしれない。

　素直な心のうちを表現するのは難しい。言葉にすると、その言葉のように押し止められてしまう気がする。そうやって曖昧で形の持たない概念のまとまりをその言葉に押し止めることにためらいがある。だけど、そうやって言葉によって感情が固定されることによって、あらためてその感情と向き合うことができるような気もする。他にもいろいろ書きたいことがあった気がするけど、忘れちゃった。彼女のこと、元カノのこと、将来のこと。医学世界の中でどうやってITの技術を活かすことができるか。先のことは考えても仕方ないとか。それでもどうしても不安で不安で仕方ないから困ってるとか。

　まあいいや。今回はこのへんで。